みかん先生はくじけません

教育革命家。未来学園HOPE学園長。しあわせ先生塾主宰。元小学校教師。平本式現場変革リーダー養成サブ講師。DoMaNNaKaマスタートレーナー。日本プロカウンセリング協会二級心理カウンセラー資格。教育についてのいろいろを綴ります。

先生とお母さんが手を組んでみる!①~どうしても嘘をついちゃうKちゃんの成長~

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「先生、相談があります。うちの子、嘘をつくのが癖になっちゃってる気がするんです。」

「嘘というと?どんな嘘ですか?」

「小さい嘘は、それこそ数えきれないほどあって…。」

 

4月終わりごろ、Kちゃんのお母さんから電話でこんな相談を受けました。

子どもは嘘をつくものです。

親に対して秘密を持つようになるのは成長の証拠でもあります。

でも、あまりに頻繁に…となると、心配です。

 

「例えば…。昨日って宿題なしでしたか?」

「いえいえ!ありましたよ。Kちゃんは、漢字ノートを家に忘れたって言ってました。」

「それ…嘘なんです。私には、先生が宿題なしって言ったって言ったんですよ。」

「忘れ物をすると、赤鉛筆で連絡帳に書いて私に見せています。連絡帳、どうなってますか?」

「1ページ破られているんです。忘れ物の記述はありません。」

「なるほど…」

「これ、もう2年前くらいからずーっとなんです。3年生の時も、4年生の時も、そうやってごまかして、やってない宿題がたくさんあるように思います。

他にも…習い事に行くって嘘をついて遊んでいたり、お小遣いでは買えないようなものが部屋に置いてあったり…。

あの子の言うことを信じたいのに、あまり信じられなくなっている自分がいて、心配なんです。」

「それは、大変ですね…。心配されていることは、Kちゃんには伝えましたか?」

「伝えました。でも、ふーん?って感じで、響かないというか…」

「これがどうなったらいいとお母さんは思われますか?」

「嘘をつく数を減らしていきたいです。このままだとKの将来が心配で…。」

 

キラーーン( ̄ー⁺ ̄)

ここで閃きました。

 

「お母さん、手を組みましょう!私たちが協力して、Kちゃんの嘘をことごとく暴いていきましょう!」

「は?」

嘘をたくさんつくのは、嘘をつく方がKちゃんにとってのメリットが多いからです。正直に言う方がメリットが多い経験を、この1年間でたくさんできるようにしましょう!

 

そこから、お母さんと携帯の連絡先を交換し、毎日SNSメールでやりとりをしていきました。

 

「宿題なしと言っています」

「宿題は漢字です」

「漢字ノート持っていきました」

「了解しました。ありがとうございます」

 

 

教室に入ると、Kちゃんは私のところに来て、すました顔でこう言います。

「漢字の宿題、やったんですけど、家にノートを忘れてきてしまいました。」

連絡帳に赤で書かれた「㋻漢字ノート」を持って。

思った通り、連絡帳の一番右端の行に書かれています。

ペラっと前のページを見ると、昨日の宿題の欄に書かれていた文字は消しゴムで消されて、「なし」と書かれていました。

 

「これ、どういうことですか?」

Kちゃんの表情が凍ります。

「昨日の宿題のところになしと書かれています。どういうことですか?」

Kちゃんは、涙目になりながら、こう言いました。

「お母さんに早く宿題やれって言われるのがいやで、なしってしてしまいました。でも、漢字をやったのは本当です!」

「わかりました。確かめますから、引き出しとランドセルをここに持ってきてください。」

Kちゃんの顔が青ざめていきます。

私はKちゃんの机まで歩いていき、引き出しの中から、漢字ノートを取り出して開きました。

もちろん、宿題はやってありません。

「どういうことか、説明してください。」

しくしく泣きだすKちゃん。

「これは初めてのことですか?それともこれまでにも同じ嘘をついたことがありますか?」

「初めてです!これまでにはありません!」

「………」

私は一瞬言葉を失いました。

Kちゃんがまっすぐに私の目を見て訴えてきたからです。

ここで正直に言ってくれたら、「よく言った!!」と認めたくて、した質問でした。

 

これは重症だ…

 

もう反射的に、自分を守るための嘘をつくようになってしまっているのだと思いました。

Kちゃんはそうやって、自分を守ってきたのです。

 

一度深呼吸。

ここは、心を鬼にして対峙します。

 

連絡帳をパラパラめくりました。

「宿題なし」と書き変えられている箇所は、5年生が始まって3週間で3か所もありました。

「じゃあ、これはなんですか??」

「……」

「説明しなさい!」

届け…!!怒りの中に祈りを込めて。

 

「それは…妹がいたずらして書いて…」

 

 

ブチッ

頭の中で音がしました。

これはドカーンといくところだ。

渾身の力を込めて一発叫びます。

 

 

「ふざけんな!!」

 

 

私の声に、教室中がびっくりしてしん…となりました。

 

 

「あなたは、4回も嘘をついた!

この嘘は、正直に宿題を忘れたと言っている人たちにも、きちんとあなたと向き合おうとしているお母さんにも先生にも失礼です!」

 

「だって…。怒られるのがいやだから。」

泣きながらKちゃんは言います。

 

「宿題を忘れたくらいで先生はこんなに怒りません!

宿題が嘘をつく材料になるくらいなら、宿題なんてやらなくていい!!

嘘をつく方がよっぽどいけない!

先生は、嘘をつかれてごまかされたことが悲しい!!

嘘をつかれているお母さんがかわいそうだ!!」

 

わんわん泣き出すKちゃん。

 

「もうあなたの言うことは信用できません!

信用されない人間は、何も任せてもらえません!

何も頼ってもらえません!!

人のせいにばっかりするんじゃない!

あなたの生き方はあなたが決めるんだ!

嘘をついてごまかすような人になるんじゃない!!」

 

泣き崩れるKちゃんの周りに、クラスの子どもたちが集まってきます。

 

 「大丈夫だよ。ぼくも、嘘ついちゃうことあるよ。」

「そーだよ。先生に謝ろう。」

「お母さんにも謝れば、きっとわかってもらえるよ」

「次から気を付ければいいんだよ。」

 

 

 

子どもたちが帰った後、お母さんにメールします。

 

「指導しました。帰って自分からお母さんに話すことになっています」

「正直に話してくれました」

「やったー!正直に話せたときは、たくさんほめてあげてください!」

「娘と一緒に泣きました。先生、ありがとうございます」

 

こんな感じのやり取りを、1学期だけで5,6回繰り返しました。

 

 

嘘は暴いて怒る。

正直に言えたら、一緒に喜ぶ。

 

 

Kちゃんは近頃、めったに嘘をつかなくなりました。

嘘をついてしまっても、

「さっきのは、嘘で、本当は…」

と、自分から言い出せるようになったそうです。

 

先生と保護者が手を組むと最強です。

お互いが、子どものためを思って協力したとき、その効果は絶大になります^^