子どもたちのトラブル解決法~どこでかけ違いが起こったかを発見せよ!~
大縄チャレンジで最高記録を目指すべく、みんなで声をかけ合って、元気に校庭に飛び出していった子どもたち。
(大縄の八の字跳びをして、2分間でどれだけ回数を跳べるかを競うチャレンジです)
ああ…。こういうのに楽しみながら取り組めるようになったんだなぁ…( *´艸`)
なんて。
しみじみ喜びにひたっていたのもつかの間。
学級運営は、そんな甘いもんじゃないのでした。笑
予鈴が鳴って、クラスに帰ってきた子どもたちは、何やらとても不満そう。
明らかに、どんよりとした空気が漂っています。
「どうしたの?なにかあった?」
聞いてみると、子どもたちは口々に答えました。
ぜんっぜんだめでした。
なんかみんなやる気ないんですよ!
ふてくされたようにKくんとYくんが言いました。
はぁ?やる気ないんじゃないでしょ!
苦手な子を仲間はずれにしたのはそっちじゃん!
反論するKさんとMさん。
は!?
仲間外れになんかしてないし!
そっちが勝手に抜けただけじゃん!!
まじふざけんなよ!
こういったケンカは、小学校では日常茶飯事です。
大縄チャレンジだとか、合唱コンクールだとか、バスケ大会だとか…
うまくいけば、クラスの絆を深め友情を育むステキなイベントですが、
うまくいかなければケンカの火種以外のなにものでもない。
うまくいかなかったときに、どう対応するかがとても大切だなぁと思います。
この日のケンカは、みるみるヒートアップしていきました。
勝手に抜けたんじゃないじゃん!
そっちが出てけみたいに言ったから…
うそつくんじゃねぇよ!
なんでいつもこっちが悪くなるんだよ!
お前、頭おかしいんだよ!!!
あー。これはだめだ。
許してはいけない言葉を、見逃してはいけない。
すーっと深く息を吸って、一喝。
「訂正しなさい!意見をぶつけるのと悪口は違う!!
このクラスに頭がおかしい人なんか一人もいない!!今すぐ謝れ!」
クラスがしーんとなって、Kくんがうつむきます。
今度は低い声で静かに。
「今の言葉は先生は許さない。頭がおかしい人なんかいない。今すぐ訂正してください。」
うつむくKくんをみんなが見守ります。
頭がおかしいって言って、ごめんなさい…
すると、Mさんが泣きながらこう返しました。
ううん。こっちもひどい言い方してごめんね…
Kくんの目から、ボロボロ涙がこぼれました。
「意見が食い違うことや、うまくいかないことなんか、いーっぱいあるんだよ。
それは悪いことじゃない。失敗したら、いつだってそこから学べばいい。
でも、そこで相手を否定してしまったら、前になんて進めない。
きちんと話し合いませんか?先生は、全員の話をちゃんと聞くよ。」
Kくんが泣きながらこっくりとうなずきました。
ここからは、クラス全員を巻き込んで、徹底して平本式現場検証を行います。
話は食い違っているけれど、どちらもウソをついているわけではないんです。
だって、彼らがやる気いっぱいに外に飛び出して行ったのは、間違いありません。
どこですれ違ったのか。
どこでかけ違ったのかを、一緒に丁寧に探していきます。
「まず最初に出て行ったのは何人くらいだった?」
「その時大縄を回していたのは誰?」
「そのときのみんなの様子は?」
「後から加わったのは何人?」
「そのとき、どんな声が起こった?」
「それで、誰が何て言ったの?どんな言い方だった?」
「そのとき思っていたことは?」
「それは、どう聞こえたの?」
黒板に書きだしながら、丁寧に丁寧に聞きとっていきました。
そうすれば、必ず見えてくる。
つまりは、こういうことでした。
やる気いっぱいで外に飛び出していった子どもたち。
出ていった人数は、15名ほど。
最初はとってもうまくいった。
でも、途中でさらに10名ほど増えた。
なのに、大縄を一本しかもっていなかった。(なぜだ…笑)
跳ぶまでの待ち時間が長いため、集中力が続かず、なかなかいい記録が出なくなった。
ちょっと雰囲気が悪くなり始める。
しかも、待ち時間が長いために、一部の男子がバスケットボールでドリブルしながら待つようになる。
(バスケ大会も近いため、本人たちにあまり悪気はない。一石二鳥的な感覚。)
そのとき縄を回していたのが、KくんとYくん。
この男子たちにイライラし始める。
まじめにやれよ!
やる気があるやつでやらないと記録が出ねぇだろ!!
かけ違いは、まさにここで起こった。
運動が苦手な大人しいTさんとYさんが、自分に言われたと思ってショックを受けたのだ。
立ち止まってうつむいてしまったTさんとYさんに、KさんとMさんが声をかけた。
大丈夫だよ。一緒にやろう。
その辺りの数名が集まって声をかけてあっていたため、大縄の流れが止まってしまった。
おしゃべりしてないでちゃんと跳ぼうよ!
何が起こっているか分からないYくんが、縄を回しながら声をかける。
そこに、もう一本目の縄をもって出てきたMくんが現れる。
もう別れて跳ぼう。
できる人たちだけで跳びたい人は勝手にやればいいじゃん。
そんな感じで、半分以上のメンバーが抜ける。
残ったバスケットボールをもっている男子たちは相変わらず。
なんで勝手に抜けるんだよ!
これじゃあこっちが足りないよ!
騒がしい校庭。
Kくんの声は、抜けていったメンバーには届かない。
そうこうしているうちに、予鈴のチャイムが鳴った。
ここまで黒板に書きだされると、子どもたちは、もうすっかり納得している様子だった。
「次はどうする?どうしたい?」
そう聞くと、Kくんがにっとして答えました。
まぁ、間違いなく縄は2本必要ですね。
あと、言葉が全然足りてねぇ!
クラスにどっと笑いが起こります。
「先生はね、大縄ごときで本気で怒っちゃえる人がいる、真剣さがうれしいよ。
傷ついた友達を放っておかなかった優しさがうれしい。
苦手でも、最後まで跳び続けた人たちのがんばりがうれしい!」
失敗は成功の素。
真剣だからぶつかり合う。
彼らが巻き起こす一つひとつの事件に、まっさらな気持ちで一つひとつ向き合っていくことが大切です。