文句を学びに変えちゃおう!~自ら考え成長していく機会をつくるには~
先生、聞いてくださいよ。
私たち、一生懸命話し合いを進めているのに、みんなが文句ばっかり言うんです。
とくにSくんとか。
時間が限られているから、指名することができなかっただけなのに、「ひどい!」って言ってくるんですよ!
先生、進行している人が、他の人は指名したのに、ぼくだけ飛ばしてきたんです。
それで、「時間がないから仕方がないでしょ!」とか言ってくるんですよ。
Nくんのことは指名したのに、ひいきです。ひどいんですよ!
子どもたちが自主的に自分たちで話し合いをするようになると、必ず起きるぶつかり合いです。
わたしはこういう時、絶対になんとかしてあげません。
両者の話を、
「うん、うん。そーなんだ。それで?へぇーー!そうなの?」
と聞き切ります。
「他にも何か嫌なことがあった?うん、うん…。そーなんだ。」
そう言って、もう何も出なくなるまで聞き切ります。
そして、最後にこう言います。
「それで??先生にどうしてほしいの??」
「え?」
「だから。それで、先生にどうしてほしいの??」
子どもたちはだいたい、ここでびっくりしたように黙ってしまいます。
私は、冷たくキツイ口調できっぱりこう続けます。
あー。先生がなんとかすればいいの?
んじゃ、こういうことだ。
Sくん。
話し合いを進めている人は、慣れない中、時間も見ながら必死に進めているんです。
32人もいる中、10分間で話し合いの結論を出さなければならないときに、すべての人の意見を全部平等に聞くことは不可能です。
文句ばっかり言われたら、どんな気持ちがするかわかりますか?
譲り合う心や、相手を思いやる心をもてない人は、話し合いから抜けてください。
わがまま。迷惑。
Sくんが抜ければうまくいきます。
そうですよね?
進行をしていた子どもたちから、声が上がります。
「ちがいます!抜ければいいなんて思ってません!」
進行をしてくれたあなたたち。
前に立って何かをするということは、ある程度、自分の持っていきたい方向に話し合いを動かすことができます。
強い思いを持っていても、座っている人たちはあなたたちのようには自由に発言をすることができません。もどかしいときもあるんです。
人の前に立つ、ということには責任が伴います。
話し合いがうまくいかないのは、あなたたちの進め方に問題があるからです。
うまくいかないことがあったときに、人のせいばかりにして文句ばかり言う人は、前に立つ資格はありません。
そういう人たちは、もう勝手に前に立って進めないでください。
迷惑です。席に戻りなさい。
Sくん、これで満足ですか?
Sくんが涙ぐんで首を振ります。
「そこまで言ってません!ごめんなさい!」
文句ばっかり言っている人間は成長しません。
うまくいかなかったのは、人のせいですか?
うまくいかないときはどうすればいいですか?
あなたたちに今できることはなんですか?
子どもたちの表情は、もう変わっています。
子どもたちの中にあるもやもやを大げさにして私がぶつけたことで、彼らの感情はおさまる。
相手へのいたわりの気持ちが生まれてきます。
「Sくん、うまく進められなくてごめん」
「そんなことないよ。わがまま言ってごめん」
最後に、クラスのみんなの方を向いて話します。
何か行動を起こすことで、成功することと失敗することが出てきます。
失敗したときは、成長するチャンス。
次はどうしたら失敗しないか学ぶことができる大チャンスです。
今回、進行してくれた人たちとSくんは、このことからたくさん学ぶことができると思う。
どんどん成長していきます。
ただぼーっと座っていただけだったみなさん。
みなさんは、このままだと、今回のことで学ぶことはあまりありません。
ただ座っていたみんなも、考えてほしい。
次、こういうことにならないようにするために、自分にも何かできることはあったんじゃないかな?
自分がSくんや進行している人たちだったらどうしたかな?
そうしたら、みんなにとっても成長のチャンスになりますよ。
先生は、文句はきらいです。
みんなからの相談だったら、いくらでも力になりますよ。
すると、座っていたKさんが言いました。
「前に立ってくれた人たちは大変なのに、私たちもあまり協力してなかったと思う。ごめんね。」
ぼくも… 私も!
声が上がります。
Yくんがすっと前に出てきて言いました。
「先生、あと10分時間をもらえますか?先生もいるところで、話し合いがうまくいく方法をアドバイスしてください。お願いします。」
私は、にっと笑って言います。
「いやです!授業をします!また授業が遅れます!!」
どっと笑いが起こります。
「でも。まーいいよ。ただし、条件がある。
うまくいかないことがあったとき、みんなが文句ばっか言うんじゃなくて、きちんと相談をしてアドバイスを求めたり、失敗を生かして学び続ける人になってくれるなら!」
なりまーす!!
できまーす!!
元気な声が返ってきました。
私も失敗を恐れず、失敗を生かして成長する人でありたい。
だから、大人がなんとかしてあげるのではなくて、子どもたち自身が自分で考える機会をたくさん作っていきたいです。