私を褒めなかった母の決意
今週のお題「おかあさん」
母は、私をあまり褒めなかった。
賞状をもらっても、何かの代表に選ばれても。
「ああ、そう。がんばったね。」
そうクールに答えるだけ。
私はずっと不満だった。
もっと褒めてほしかった。
家のリビングの棚の真ん中には、姉のたった1枚の皆勤賞の賞状。
その横に、私の賞状は何枚も重ねられて平等に飾られた。
私はずっと不満だった。
たくさんもらった賞状が、姉の皆勤賞と同等に扱われることが。
姉は、友達からよくいじめられていた。
その姉をかばうこともできず、「○○の妹じゃん」と指を指されることも嫌でたまらなかった。
「私の方がすごいのに。」
そう言うと、母にめちゃくちゃ怒られた。
「あなたよりお姉ちゃんは根性がある。じゃないと皆勤賞はとれない。」
「お姉ちゃんは○○もできない。」
そうやって、お姉ちゃんをバカにすると、母にめちゃくちゃ怒られた。
「お姉ちゃんは人のことをバカにしたり、悪く言ったりしない。それはお勉強ができることよりもすごいことだ。」
「お姉ちゃんはすぐ人に騙される。笑われる。」
そうやって、お姉ちゃんを悪く言うと、母にめちゃくちゃ怒られた。
「人を騙したり、笑ったりするあなたより、お姉ちゃんの方がずっと立派だよ。」
私は自己肯定感が低く、ひねくれた子どもだったと思う。
まっすぐで素直な姉に、よくいじわるをしていた。
母は、すべてお見通しだった。
姉は、今で言うところの発達障害的なものをもっていると思う。
それに気がついたのは、私が大学生になってから。
私たちが子どもだった当時、そんな括りはあまり知られていなかった。
姉の苦労とか、姉のよさとか、すべてを受けとめられるようになったのは、教師という職についてからだ。
ある日、母は私に話してくれた。
どうしても、あなたに人をバカにするような人になってほしくなかった。
どうしても、お姉ちゃんには、自信をもって生きていってほしかった。
あなたは大丈夫だと思って、無理をさせたところがあったかもしれない。
立派に育ってくれて、よかった。
私を褒めないことにした母の決意。
その決意を理解するまでに、ずいぶんと時間がかかってしまったけれど…
その裏にある愛情はきっと、小さな私にも伝わっていたんじゃないかな。
姉は、子煩悩な一児の母になりました。
危なっかしいところもありますが、明るく元気に子育て中です。
ちょっと不器用だけど、とても優しい強さをもつ私の母が、私は大好きです。
お母さん、ありがとう。
今年の母の日は、何を贈ろうかな。