子どものけんかスッキリ対処法~とことん寄り添ってみましょう~
給食の準備時間。
Nくんが私のところに駆け寄ってきた。
Kくんが殴ってきた。
Kくんは、4年生まで問題児としてよく話題に挙がっていた子で、やんちゃっ子のボス的な存在だ。
Kくんのそばに行くと、怒りに満ちた表情をしたKくんがいた。
4月の頃に、Kくんがよく見せていた表情だ。
事情を聞いてみると、二人の意見が食い違う。
先に仕掛けてきたのはKくんだ 、いや、N くんだと、また口論を始め出す。
2人の興奮がおさまらない。
こんなときは…
ふぅー……
深く息をして、まずは自分が落ち着くこと。
そして心に決める。
よし。
2人にとことん寄り添いきるぞ✨と。
先生はどっちのことも疑ってない。
どっちの話もちゃんと信じる。
それぞれの話をちゃんと聞きたいから、それぞれが思う本当のことをゆっくり聞かせてくれる?
そう言うと、2人の表情がふっと和らいだ。
そっか。そうだったんだね。
その時どんな気持ちだった?
それの何がいやだったの?
2人から丁寧に聞いていくといろんなことが見えてくる。
起こったことが1つの作品のように繋がって、ストーリーになっていく……
給食準備中、国語のポスター制作が終わっていなかった K くんのグループと N くんのグループは、その作業の続きをしていた。
Kくんから見た世界
Kくんは、不器用な男の子だ。
ポスター作りはとっても苦手。
それなのに、ペアを組んでいる女の子が合唱部の都合で教室を留守にしていて、いない。
絵の部分を任されたけど、自信がない。
「誰か絵が得意な人手伝って!」
そう助けを求めた。
みんなに助けを求めると、絵が上手なYさんを発見!
Y さんの所に頼みに行った。
すると、 Nくんがそこに割り込んできた。
「絵、かいてあげるよ。何でもいいんだろ?」
なんだかいやな感じだ。
「やめろ。ふざけるな。」
それでもペンをとって書こうとしてきたN くんに頭にきた K くんは、N くんを殴った。
Kくんは、ポスターを自分のせいで台無しにしてしまうのがどうしても嫌だった。
ずっとやんちゃっ子だったKくん。
「今まで国語の時間にちゃんとポスター作ったことなんかなかったんだ。いつもふざけてきたから。でも、今回はちゃんと協力してここまで進んだのがうれしかった。だからふざけたくなかったんだ。殴っちゃってごめん。」
そう言ってポロポロ泣き出した。
Nくん から見た世界
ポスターを進めていたら、Kくんの声が聞こえた。
「誰か絵をかくの手伝って」
手伝おうと思った。
自分もそんなに絵は得意じゃないけど、力になれるかもって思った。
「手伝うよ」
そうKくんに言ったのに、Kくんに無視された。
僕を無視して、目の前を素通りして、Y さんに頼んでみせた。
なんだよって思った。悔しかった。
だからちょっとふざけちゃった。
いやな感じで「書いてやるよ」って言っちゃった。
でも、本気で怒らせそうだったから、もうやめようと思った。
もやもやした気分のまま、自分のポスター制作に戻ろうと思ってカラーペンを取った。
そしたら、K くんが突然殴ってきたんだ。
「ふざけてごめんね。でも、無理矢理書くつもりはなかったんだよ。」
ここまで話すと、2人はすっかり落ち着いている。
2人とも、自分が悪かったところが分かったんだね。相手がどんなこと思っていたかも分かったね。
深く頷くKくんとNくん。
また同じようなことが起こったら、どうしたいかを聞いていった。
「ふざけちゃったとき、いやな感じで言うんじゃなくて、僕も手伝いたいから、無視されたら悲しいって伝えたい。」
「ふざけてきたら、手伝ってくれるのはうれしいけど、何でもはよくない。◯◯の絵をかいてくれたら助かるなって言う。あと、暴力はぜったいだめ!」
もしも、それがどこかでできていたら?
「ケンカにならなかったね!」
そう言うと、2人は顔を見合わせてにっと笑った。
行動には目的がある。
その行動にその子を突き動かした感情がある。
しっかり寄り添っていきたいです。